大会長挨拶
このたび、第38回日本舌側矯正歯科学会学術大会を、文化と情報の交差点として常に新しい潮流を生み出してきた東京・渋谷にて開催できますことを、大会長として大変嬉しく存じます。そして本大会もまた、この地から矯正歯科の未来を力強く発信する場となることを願っております。
本大会のテーマは、「矯正歯科治療における『治す』を探求する―エビデンスと臨床の両翼をもつために―」です。エビデンスは翼の骨格、臨床は羽ばたきを支える筋肉とも言えましょう。両翼が揃ってこそ、矯正歯科治療は健康と生活の質を高める「治す」医療となりえると考えます。そのため、科学的根拠に基づく研究成果と臨床で培われる知見の双方を融合させ、確かな治療を広く社会に提供することが求められます。
本大会では、招待講演、依頼講演のほか、「治す」をテーマとしたシンポジウムやケースマラソンとして多数のリンガル矯正症例報告を予定し、さらにコ・デンタルセミナーも併催いたします。国内外の第一線でご活躍の先生方をお招きし、最新の研究成果や臨床報告を共有いただきます。ご参加の皆様には、エビデンスと臨床を往還する議論を通じて、舌側矯正の未来を共に切り拓いていただければ幸いです。
渋谷という多様性と創造性に満ちた街で、リンガルブラケット矯正というフィルターを通して、新しい知を育み、矯正歯科のさらなる発展につなげられることを心より願っております。
最後に、本大会の開催にあたりご尽力いただきました関係各位および、ご協力を賜りました東急ホテルズの皆様に深く感謝申し上げます。また、本大会がご参加の皆様にとって有意義な学びと交流の場となり、実り多き機会となるとともに、未来への大きな羽ばたきとなることを祈念いたします。
理事長挨拶
Not lingual
But lingual
It’s lingual
よく聞かれます。自身が上手とは思っていませんが、きちんと治しているケースを多く持っているのではと思います。では、治しているとは何か?
僕も昔は治せていませんでした。実際、本会の認定医審査では一度落ちています。では、自身を振り返り、何が要因で今があるのかを考えみると。その認定医審査を落ちた時に言われた一言に突き当たります。
もう少し噛み合わせを考えなぁあかんな(大阪弁)
当時、リンガル装置を扱うだけでいっぱいいっぱいだった僕は、なんとなくI級で噛んで、なんとなく並んでいる症例を、あたかも最高の症例のように展示しました。その症例をみての一言が先の一言でした。
大臼歯のトルクがあまいためにABCコンタクトがない。前歯のトルクが甘いためにアンテリアガイダンスがとれていない、下顎前歯の幅径が大きいために、カップリングがあまい、など。
当時の僕は何を言ってるのかすらわからずに、合格出来なかった不満だけが募りました。数日後、冷静にその言葉を振り返り思ったことは、僕の思っている治療ゴールは“妥協のかたまり”だったのではないかということでした。リンガルだからここまででしょうがない、バイト先の仕事だからここまででしょうがない、治療期間が長くなったからここまででいいかも。そう思っていたことに気づかされてしまったのです。まずは、自身の治療ゴールをレベルアップしないといけないと思いました。
症例展示の中でも、一目見てすごいと思う症例があります。それは、みんな直感的にいいものを知っているからです。人は無意識にすごいものを認知する能力があります。しかし、その理由を言語化することは困難です。それをあえて一言で言うならば、
機能的に優れているものは、美しい
に集約されます。では、機能とは何か、美しさとは何なのかを知らないといけません。そのために一番知らなければならないのは、治療ゴールです。人はゴールが見えていないと悩み、迷います。今回、大会のテーマは、
矯正治療における「治す」を探求する-
エビデンスと臨床の両翼をもつために
僕たちは何を目指せばいいのか、混迷する交差点の中を歩くような現状に、エビデンスと臨床の二つの視点から光を当て、その焦点がなるべくクリアになるようなディスカッションが出来ればと思っています。
一見、舌側矯正とは関係のないことでも、全ては繋がっていて、無駄になることはなく、治療結果として現れます。それゆえに舌側矯正が上手な人は、矯正治療全般が上手と言われます。
エビデンスと臨床。一翼だけでは飛ぶことはできません。比翼の翼、連理の枝となることを願い、この一日がみなさまの今後の矯正医としての翼となり、患者に還元されることを望みます。
日本舌側矯正歯科学会 理事長
伝法 昌広